雪の形

今朝起きたら、故郷に降るような、ぼた雪が音もなくはたはたと降っていた。


私の故郷は日本海側にあるので、雪が降ると、だいたいはぼた雪だ。
たまーに寒い時に粉雪も降ったが、それはアラレをちんこくちんこくしたような雪で、ぽろぽろしていた。
ここコロラドでは、冬も湿度が低いので、ぼた雪はあまり降らない。
たまに降ると、とても懐かしい気持ちになる。


昼頃になってもう一度外に出てみたら、雲が薄くなったところからおぼろ太陽が光を投げかけていて、さっきより細かくなった雪が光を反射して、キラキラと輝いていた。
思わず寒さも忘れて、外にとび出した。


雪が、音のない空間で、光と風を受けて舞い踊っている。
きらめいて、きゃっきゃとはしゃいでいる。
舞い降りる雪は、一つ一つが光を反射する平面を持っているようだった。
手に受けて見ると、雪の結晶が一瞬きれいに見てとれた。


大急ぎで、家の中に取って返して、ジャケットと、手袋と、青いコーヒー缶のフタとを見つけて、つっかけをはいて、(ブーツはけよ)外に出た。
青いフタをちょっと積もった雪の上に置いておいて、表面の温度を下げた。
その間にさっきまで積もっていた雪を手袋にとってみて観察した。
直径6〜7mmかそれ以上ののでっかい雪の結晶が、いっぱい重なっている。これがさっきのぼた雪の正体だ。重なっていても、一つ一つの形が崩れていなくて、すごく綺麗だ。
故郷のぼた雪は、もっと重く、結晶がくっついて固まっているものだった。


絵に描かれたような、図鑑の写真で見たことあるような、美しい美しい雪の結晶が手の中にある。
母なる大自然はアーティストだ。誰よりも、素晴らしい、果てしのない。
息をしたらとけてしまうので、息をじっと止めて見つめた。


それから、かなり冷たくなった青いフタに今まさに落っこちてくる雪を受け止めて、その一つ一つをまた息を止めて見つめた。
小さいが、綺麗だ。
各々が、全部違った形だ。
キレイに六角形になったもの。ちょっと線が伸びかかっているもの。クリのイガみたいなもの。二つくっついて成長したもの。三つくっついているもの。


雪の結晶にはどれ一つとして同じものはないのだな。人間に誰一人として同じ者がいないように。
それぞれが美しく作られて成長して、この地上に降りてくるんだ。
ただ世界を白で覆う為に。
そして消え去っていく。水になっていく。


しんみりとした。
あらためて、いつも私を励ましてくれる雪に、ありがとうと心のなかで言った。
色々な形のある雪の結晶の中で、自分がなるとしたら、あのツクツク針みたいのが出てるやつだな、と思った。まだ素直じゃないから。